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連作29 芳連作13 坂の途中で
+++++++++++++++++++++++++++++++
 種別 連作系第29期 芳連作13
 題名 『 坂の途中で 』
 初出 ニフティサーブ/FJAMEA/18番会議室
    1998年05月28日01時14分
 注釈 行頭スペース+30W
+++++++++++++++++++++++++++++++
SUBJ:【芳連作】13 坂の途中で

 ST V.4.5 SLBs Nobi-Standard

 それほど芳しくもないのですが しかし 芳連作 #13(B群)
 



          『 坂の途中で 』


                        作:しびる





  前から少し気になっていたけれど 毎日色々考えることや片さな
 ければいけないことがあるから ドラマや映画を見てるときなどに
 ああこのシーンはきっとあとで伏線になるんだなって感じのことも
 普通は拘ったりしないもので 気になってた それだけだった

 『      あの       あのお    』
  最初は空耳かと思った 誰かに呼び止められた気がして立ち止ま
 る 考え事はしていたけれど眼は開けていたから 周囲に誰もいな
 かったことぐらいは記憶していた すぐ隣から 耳の側で
 『  なのですが ああ 気付いてくださる方が いるなんて』
 『はあん なにっ うわあああっ』
  快晴の午後 住宅地を縫うなだらかな坂道 スーパーのビニール
 袋を提げてゆっくり歩いていた 高地に切り込んだクサビのような
 場所で 両側はまだ花を付けないセイタカアワダチソウだけ
 『僕はどうしたんでしょうか よくわからないんです あのお』
 『う うわ うわああああああっ』
  不意の声に驚いて 首だけ左を向いてすぐに理解した 虚ろな眼
 をした男性が まるで陽射しや風景を無視して佇んでいた
 『誰も気付いてくれなくて 頭が痛いのに 凄く 頭が』
  あたしに話し掛けているのか 眼の焦点が定まらず どう見ても
 普通じゃないその姿に 考える前に駆けだしていた
  坂の終わりまで全速力で走り 勝る好奇心に振り返った ニュー
 タウン分譲のイラストみたいに整った景色 更地から延びる緑の帯
 が歩道に面して しかし 誰もいなかった どこかに隠れる場所も
 時間もなかったのに 肩で息をして 何度も振り返った

 『変なもの見ちゃって 坂のところ 前から変な気がしてたのよ』
  帰るなり玄関で話し始める 靴を脱ぎながら後ろ手でドアを閉め
 る まだ胸がどきどきしている 今になって袋の中身を思いだす
 『ねえ 聞いてよ 変なの見たのよ 変過ぎてなんだか』
 『遅いぞ 晩飯までパチンコ行ってくるからな』
  廊下をのそのそと夫が歩いてくる あたしの話を聞く気もなくて
 それはいつものこと こんなに興奮してるのに
 『なにそれ せっかくの休みなのに それよりも ねえってば』
 『どうせUFOか幽霊だろ いいトシして頭悪いな お前』
  言うだけ言ってぷいと出掛けてしまう なんだかばかばかしくな
 って溜息 袋を覗いてげんなり 慌てて走ったから タマゴのパッ
 クが黄色くなっている 静かな家の中にひとり佇むあたし

  隣で寝息を立てる夫 枕を抱き込んでぼんやり考えていた 昼間
 の不思議な体験は あれから幾度も頭の中で反芻して もうなんだ
 か 本当にあったことかどうかも怪しくなってしまったけれど た
 だ虚ろな眼差しは記憶に焼き付いて それを思い返していた
  部屋の端のクローゼットの上 青く輝くデジタル表示が 静かに
 点滅しながら午前1時12分から13分へと変化する なにか
 『       あの      あのお   』
  夫の寝言かと思った 遠くから近くから 妙な抑揚で聞こえる声
 でもすぐに理解した この声は そう 快晴の坂道の 身体中にび
 くっと電流が流れた 夫を起こそうとして 声にならなかった
  金縛りだ 中学生の頃 いや高校の頃にもなったか あの頃の嫌
 な記憶が蘇る 呼吸もロクにできない
 『  なのですが ああ 気付いてくださる方が いるなんて』
  同じ台詞 昼間聞いたのと寸分違わない それはどうだか覚えて
 いないけれど 怖い あの虚ろな眼をした人間が あたしの側 こ
 の寝室のどこかにいる 怖くて心臓が止まりそうな
 『誰も気付いてくれなくて 頭が痛いのに 凄く 頭が』
  気が狂いそうなほどの恐怖 指先ひとつ動かせない なのに隣か
 らは夫の寝息が聞こえてくる どうしてこんなにハッキリ聞こえる
 のに 懸命に力を振り絞って もう少し もう少しで
 『きゃあああああああっ やああああっ』
 『おう なんだ どうかしたのか なんだ』
  叫んだと同時に起き上がる 夫が慌てて首だけこちらに なにを
 どう説明したものか 深呼吸して わなわな震えた
  無意識に視線がクローゼットへ デジタル時計が午前1時12分
 から13分へ 確かさっきも13分になったのに

 『本当だってば あんな凄い金縛り 寝惚けてないって』
  朝食の準備をしながらキッチンで あれからすぐには眠れなくて
 まだ頭がぼんやりしている 夫はタバコを吸いながらテレビを見て
 いる ミートボールを袋ごと茹でる
 『お前いくつだ 近所でばかな話するなよ ホント頭悪いな』
 『なによ 本当だって言ってるのに もういいっ』
  話にならない いつからかこの調子 昔はこんなふうじゃなかっ
 たなんて みんなそれぞれ変わっていくけれど それでもやはり溜
 息をつく ミートボールを皿にあけて 予定の目玉焼きはきのう割
 ってしまったから 買い足さなきゃいけないかな

  朝の残りのミートボールを電子レンジで温めて 適当に済ませた
 昼食を片して 3時に洗濯物を取り込むまで 午後のテレビをぼん
 やりと眺めていた つまらないドラマか 下世話なニュース
  居間のソファーに座って眠気が襲う きのうはあまり眠れなかっ
 たから 油断をすると眠くなる 薄目を開けてテレビを見る 見て
 いなければ眠ってしまいそうで 画面ではどこかで見たようなタレ
 ントが喋っている 画面の端に暴力疑惑がどうとか
 『ええそうなんですよ 助けを呼んでも誰も気付いてくれなくて』
  音量を絞っているから なんとなく言葉の端々だけ聞こえる い
 よいよ眠くなって眼を閉じる 朝のテレビで見た内容か どこかで
 聞いた言い回し ぼんやり 聞くとはなしに ぼんやり
 『誰も気付いてくれなくて 頭が痛いのに 凄く 頭が』
  ハッと眼が覚めた この台詞 ああっ 瞬間に背中に悪寒が走る
 画面を凝視して しかし映っているのはCM 慌ててリモコンを押
 しまくる もうどのチャンネルでも扱っていなかった
  頭の中にあの虚ろな眼が浮かんできて 怖くなってテレビを消し
 た なにかが変だ なにかが起こっている

 『信じなくてもいいけど 昼間のテレビでね きのうの』
 『いいかげんにしろ なに言ってんのお前 わかってるのか』
  帰宅した夫に話してみる 思っていた以上の反応 まるであたし
 の頭が変になってしまったかのように 眉間にシワを寄せて睨み付
 けている こんなに怖がっているのを理解してくれないのか
 『だって 変なんだってば うまく言えないけど 変なのっ』
 『変はお前の頭だ くだらねー本とか読んでるだろ だからだよ』
  あたしの趣味をくだらないで一蹴する 自分はと言えばパチンコ
 か麻雀で いいトシしてマンガ雑誌を読んで笑っているくせに な
 ぜあたしの話を聞いてくれないのか 腹が立つ前に悲しくなる
 『変な声が聞こえるのっ 変な人を見たんだから だって』
 『だってじゃねーだろ これ以上頭のおかしい話はするな 気味が
 悪いんだよ 真面目な顔で幽霊だとか なに考えてるんだお前』
  大声で怒鳴られて あたしは俯いて泣いてしまう この不安な感
 じをどうして理解してくれない 話すのを諦めた

  ギリギリまで我慢して それでも夜ひとりでトイレに行けないな
 んて 夜中に夫婦喧嘩もしたくないから 気持ちよさそうに寝息を
 立てる夫を起こさないように 静かにベッドから抜けだした
  ずっと考えていたからわりと冷静に分析して 夫の意見は語調は
 とにかく正論で あたしの頭はどうかしてしまったのか 自分が狂
 ってしまったことを認める恐怖 もしかして あたしが変だと感じ
 ていることは それがいわゆる普通のことで 狂ってしまうよりも
 狂っていることに自分が気付かないことに 背筋が寒くなる
  ゆっくりドアを開けて廊下へ 淡いオレンジ色の照明を頭上にト
 イレへ なにかがいるような予感を故意に押し開いて もしなにか
 が現れるなら 狂っていないことを証明するために 洗面台の鏡を
 真正面から睨み付けた あたりまえのように 自分の姿だけ

 『       あの      あのお   』
  遠くから近くから声が聞こえる どうしてだろうなにも見えなく
 て まったく体が動かない 指先ひとつ動かないのは まただ金縛
 りだと凍りつくような恐怖が襲う
 『なにか でしたか  おそらく なにか予兆のような』
 『  なのですが ああ 気付いてくださる方が いるなんて』
  誰か違った人間の声がかすかに混じる 夫の声でもなく 淡々と
 事務的に その声に重なって例の声 また大声で叫んで ばかなこ
 とをと罵られてもいい この金縛りを いやなにかが見える
 『誰も気付いてくれなくて 頭が痛いのに 凄く 頭が』
 『変なものが見えるって話を こいつ ずっと こうなんですか』
  闇の彼方に薄ぼんやりと もうそれだけで理解できた あれはき
 っと虚ろな眼の 側で夫の声が聞こえる 起きているなら助けてく
 れればいいのに 誰と会話をしているのか
 『自発呼吸がありませんから お気の毒ですが 脳は完全に』
 『そうですか はあ 俺のこと見えてないんですか 見てるのに』
  体の感覚がない 見えているのは薄ぼんやりの人の姿だけ 夫は
 誰と話しているのだろう ここは寝室じゃないのか

  一瞬だけなにかが眼の前を過ったような気がして そしてなにも
 聞こえなくなった 前から気になっていたこと なんだろうと考え
 ながら 眠ってしまった





             》 しびる 《
+++++++++++++++++++++++++++++++
(のりこ)>ひさしぶりにホラーテイストですね なんかよくわから
      ないですけど この女性の病床の夢ですか?
(しびる)>読んでわからないことを説明するほどヤボなことってな
      いが 死期の近い人間特有の現象ってあるんじゃないか
      と常日頃思うんだわ 見えるとか 聞こえるとか
(のりこ)>虫の知らせってヤツですか ヤな話ですね てか 常日
      頃そういうことを考えてらっしゃるわけですね
(しびる)>ふつう考えるだろ なんか耳鳴りとか幻覚とか見えると
(のりこ)>耳鳴りはとにかく 幻覚は見えませんし?
(しびる)>睡眠時間が極端に短くなると なんかやたらそのへんの
      ものが人影に見えてくるのな 前にも話したけど
(のりこ)>バロメーターですね バロってなんでしょ 友情エナジ
      ーのことじゃないかと思うんですが と話題を替えます
(しびる)>バロムエナジーだな
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Appendix

そうめんのカビ

 そうめんに限らず 穀物に生えるカビには発ガン性のあるものも存在します もったいないですがそうめんにカビが生えたらば廃棄処分しましょう 同じようにモチやパンもカビが生えたものは食べない方が賢明です

文責:そうめん愛好家・篠原のりこ


関連項目
編集会議 138
*議事録後半に『そうめんのカビ』について触れています


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Author:篠原しびる
  
 ネット作家・篠原しびるが各所に書き散らかした作文を分類整理するために開設されたのが『篠原リサイクルテキスト研究所』です 篠原しびるをご存じではない方も心配しないでください 当研究所が開設されたからには 篠原しびるが思いの丈を注ぎ込んだ様々な作文をつぶさに閲覧し その人と成りをば誰の目にも明らかになるように見事分類整理されてしまうことでしょう しばしお待ちください そしてとくと堪能してください

 いつも思うのですが冒頭の挨拶はこれくらい曖昧でもいいのでしょう(ジオ分室トップページより抜粋)

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